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命名。   【転】 

 年が明け、無事にあかちゃんも生まれ、安産といえば安産、難産といえば難産の微弱陣痛、出血多量のピンチを乗り切った翌日。
 既に“あおい”という名前で強行することを決めていた俺は件のお寺に連絡を入れる。
「明けましておめでとうございます。御無沙汰しております。□△のいわもと鮮魚店の長男のあきらです。以前結婚の御報告にお伺いした時に、突然だったもので御住職がいらっしゃらなかったものですから・・・云々」
 久々に連絡をした不義理を侘びる。
「・・・実は昨日、長男が生まれまして、もし御都合よろしければ明日にでも一度名前を観て戴けないかと思いまして・・・」
 つくづく、サラリーマン時代に営業を経験していて良かったと思えるトークの流れ。低姿勢を通しつつも、こちらのお願いを伝えてしまう術。

「では11時くらいに。いくつか候補があるんだったら持ってきて下さいね」
 御住職の奥様なのかな。はっきりとはわからないのだけれど、御礼を述べる。予定を空けて頂けて本当に良かった。


 1月5日。
 朝一に実家に立ち寄り、出産直後の孫の映像を見てもらう。
 ごくごく短い時間。
 喜び、安堵する両親。
 腰を落ち着けるでもなく、すぐに車で2時間は掛かろうかという御住職のお寺を目指す。
 3つの名前を書きとめた紙を用意して・・・。

 第一候補はもちろん“碧/あおい”。
 そして念のために“蒼生/あおい”。とにかく生き抜いて欲しい。世知辛い世の中だけど、夢や希望をあきらめずにとことん生き抜いて欲しいとの願いを込めて。“蒼”は甲斐さんのアルバムタイトルに『少年の蒼』ってのがあるくらいだから・・・個人的な趣味としてはOKなんだけどな。“碧”の字画がイマイチな今、対抗馬としては充分だろう。
 更に“晴”。思いっきり当て字だけれど、これも“あおい”と読ませたい。だって、“日”+“青”なんだもの。あながち無謀とは言えないでしょ。ネットの姓名判断ではまずまず字画も良かったし。

 万全の用意を整えた・・・つもりだった。
 早く出生届を出して堂々と名前を呼んであげたい。
 1月7日は大安吉日。なんとかその日に提出出来るように。

「うーん。“碧”か。あまり良くないな。うーん。どうしてもこの字を使いたいのなら、4画の漢字を下に付ければ総画が31画になる。男の31画は最も良いとされている吉数のひとつ。4画って言ったら・・・例えば“仁”なんかがあるな。でも読みがなぁ・・・。“へきじん”って言うのもなぁ。まっ、今はいろいろこだわった名前をつけたがる人も多いからな。ただこれで完璧というわけではない。10画と8画の二文字で18画の名前にするととても良いんだがな。どうかね?」
 頭の中がグルグルとまわり始める。
「“蒼”か。わしはクサカンムリは好かん!」
(す、好かん??? もう8割方これに決めてたのに、『好かん』で終わりなの? えーっ・・・)
「“晴”ね。なんて読むの」
「“はれる”か、当て字で“あおい”と読ませようかと・・・」
 本心は後者。あくまでも控え目に伝えてみる。
「うーん。やっぱり10画+8画が良いなぁ。もう一度考えてみたらどうかね。ここまで来るのも大変だろう。FAXでも良いから送ってくれれば観てみよう」
「どうもありがとうございます」
 かなり要約したけれど・・・。とにかくどれも良いお返事は戴けなかった。
 ガックリ・・・。

 確固たる自信がグラグラと弱まり、やがてグツグツになるまで悩み込み、煮詰まり、干乾びて、粉々に砕け散り、風で吹き飛ばされ、諦めようかというまさにその時、忘れかけていたNEVER GIVE UP! の精神を思い出し、散り散りになった粉末を丹念に一粒一粒寄せ集め、再び水を加えて練り直し、捏ねてこねて捏ねまくり、渾身の想いで火を入れて・・・・・・という作業をこれまた二度三度繰り返すようなとんでもない状況に陥るとは、この時、微塵も気付いていなかった。
  

 これまでどれだけ考えたことか・・・。
 自ら設定していた出生届の提出期限まであとわずか。
 寝ても覚めても脳内は漢字で埋め尽くされ、ちょっと閃いては空中に指で文字を書き、(いちにぃさんし)と画数を数え・・・。
 迎えた1月7日。朝一番にFAXを送信する。
 
“真青”(10画+8画)~“真”に“青”いんだから、“あおい”で行けるでしょ。
“晃旺”(10画+8画)~“晃”の“あ”と、“旺/おう”を強引に“おい”と読ませれば・・・。
“晄旺”(10画+8画)~“晄”は“晃”の異体字。案外いいかも・・・。
“藍”(18画)~10+8ではないけれど、“藍”は“青”を生み出すものだから。
 すべて“あおい”。
 もう執念としか言いようがない“あお”への想い。

「男の子だから“青”」―――そんな没個性、奪個性のような大人の押し付けはガキの頃から嫌だった。俺は俺。ジーンズの“ブルー”は好きだけど、「男の子だから“青”にしときなさい」なんて言われてもちっともうれしくなかった。幼稚園に入る前から、心に染み付いた感覚。
 だけど、独立起業する時、なぜだかうちの店のイメージカラーは“青”だと思った。ひたすら澄み渡る広いひろい空のような“スカイブルー”。カーンと突き抜けた明るい青色。
 そして、今、また我が子への想いも“青”一色に染まっていた。
 関係無いけど、俺はジーンズ生地以外の青い服なんてほとんど着ない。仕事着は別だけど・・・。パンツなんかに至っては現場の無い日は赤やピンクの暖色系のトランクスを穿くようにしている。家でくつろぐ時も赤やピンクのシャツやトレーナーが多い。そうすることでONとOFFの使い分けをうまく出来るように・・・・・・ハードな毎日、そうでもしなけりゃやってらんない。

「“真青”って、“あおい”じゃなくって、“まっさお”じゃない」
「た、確かに。漢字に弄ばれててまったく気が付かなかった。でもまっ、一応、御住職に観てもらおうよ」 
 前日に嫁さんに指摘された痛ーいところにドキドキしつつ、御仁の返事を待つことに。

 しばらくして送られてきた1枚のFAX。
≪   真典(マサノリ)
     晃典(アキノリ)   ≫  
 確かに10画+8画。
 全てはあっさりと否定された。
 ありがたいお名前。
 だけど当初のコンセプトがまるっきり・・・。
 1月7日。大安吉日。
 ひとまず出生届提出はお流れに。

 強引に行くべきか、引き下がろうか。だけど我がことならば我を通そうも、こと自らの子供のこととなると、やはり“良いと言われるモノ”を無下にすることも出来ず、再び不義理を働くことも出来ず。どうしたものか・・・。
 第一、親と同じ漢字を引き継がせるというのはあまり好きではない。子には子の、オリジナルを追求していく自由と幸福とをつかんで欲しい。
 それに“典”の字は・・・。
 どうするべきか・・・。
 
「先日はわざわざFAXまで戴き、大変ありがとうございました。
 アドバイスして頂いたお名前(真典・晃典)ですが、二人居る妹の内の片方の漢字を用いるのは少々忍びなく、真に恐縮ではございますが改めて無い知恵を絞ってみました。
 8画の“昊”という字を用いて『真昊』というのはいかがでしょうか?
 珍しい名前になってしまいますが、出来ればこの名前を付けたいと思います。
 本日は仕事のため、決まった時刻にご連絡差し上げることが難しいとは思うのですが、お昼前後に一度電話させて頂きたいと思います。
 お手数をお掛けしまして、大変申し訳ございませんが、何卒、よろしくお願い申し上げます。

追伸
 何度も申し訳ございませんが、よろしくお願い申し上げます」



 1月9日朝。
 寝ずに書いた父の執念をFAXで流す。
 読み方は突飛過ぎなければ割合どうでもなると聞いている。
 無事に送信出来たことを確認し、仕事へと向かった。

                                   つづく



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[ 2009/02/07 16:53 ] あかちゃん♪ | TB(0) | CM(0)

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